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フリーで生きることに必要なのは理解と設計

長い間私は、UI/UX的な実務デザインをしていながら、それを名乗らずに働いてきました。
理由は、正社員時代からずっと「Webデザイナー」という肩書きで仕事をしてきたからです。

けれど、実際に担っていた業務内容を振り返ると、構成や導線の判断、情報整理の優先順位付け、デザインの意図説明、他デザイナーへの指示や調整など、いわゆるUI/UXやアートディレクション寄りの役割を、自然と当たり前に引き受けていました。

肩書きが固定化されていたことへの無自覚

UI/UXデザインという概念が広く知られる前にWebデザイナーとしての肩書きが固定化され、自分の役割や立ち位置を肩書きの観点から再定義する発想を持てずにいました。

Webデザイナーとしてやっていた仕事に、いつの間にかUI/UXという名前が付いていて、私はそれを知らないまま、その領域に足を踏み入れていたということです。

フリー当初に起きていた認識のズレ

フリーランスになった当初の私は、UI/UXデザインができていなかったのではなく、自分がそれをやっているという自覚ができていませんでした。

自分の実務を正しく把握できていなかったため、やっていることを言語化できているつもりで、実際にはできていませんでした。

責任だけが増えていく構造

その結果「Webデザイナー」という肩書きのまま業務委託で参画し、働きぶりから自然とUI/UX設計やディレクションに近い判断まで任される状態が続きました。

Webデザイナーの単価で、判断責任だけが少しずつ増えていく。
その構造に、知らず知らずのうちに入り込んでいました。

違和感の正体が分からなかった時期

この状態は長く続き、私は心の疲労が少しずつ身体に広がる感覚と共に、ストレスが蓄積していることを自覚しました。

しかし、なぜそこまで疲弊しているのかを説明することができず、自分自身でも腑に落ちる言葉を持てないまま「とにかく損をしている気がする」という曖昧な違和感だけを抱え続けていました。

けれど、時間が経ち、経験を重ね、少し距離を置いて振り返れるようになって気づいたことがあります。
問題は損得ではなく、設計でした。

実際にやっていた仕事の正体

私はWebデザイナーという肩書きでありながら、実務はすでにアートディレクションや設計者視点を前提にしたデザインを制作していました。

エンドクライアントの課題や要望、ディレクターの意図や判断基準、それらを踏まえた調査と検証を自分の中で行い、咀嚼したうえで形にする。

全体を見渡し、どこを揃えるか、どこを崩さないか、どこまでを自分が判断し、どこを他のメンバーに委ねるか。

そうした思考を前提に仕事をしていました。

会社という環境の限界

社員時代、会社という限られた世界の中では、誰も「あなたはUI/UXデザイナーだ」と教えてくれる人はいませんでした。

狭い環境の中で、社会全体の構造を知らずに働いていた結果、私は自分の立ち位置を理解しないまま過ごしていました。

フリーになってから変わったこと

でも今は違います。

フリーになって様々な環境や人と仕事をする中で、自分が何をできるのかを把握し、それが社会の中でどの立場にあたるのか、どのように扱われる役割なのかを理解したうえで、契約の中にどこまでを含め、どこからを含めないのかを、意図的に調整できるようになりました。

フリーランスという選択の再定義

フリーランスとして働くという選択は、組織から解放され、自由に生きられるものだというイメージを持っていました。

しかし今は、フリーランスとして働くとは、構造的に自分が社会のどこに位置し、どのような価値をどれだけ提供できるのかを把握したうえで、その貢献に見合う正当な対価を、自分の意思で設計することだと考えています。

自己理解と構造理解をしたうえで、自分で設計できた時に、健全に長く、フリーランスを続けられるのだと思います。

Kasumi Nakatake
著者
nakatake kasumi

アートとデザインを軸に創作活動中。
感覚と実用性の両立を重視し、制作と暮らしに関わる内容を記録しています。